1. 医師転職とは何か

1-1. 「医師転職」が意味するもの
医師転職とは、医師免許を有する人材が、その知識や経験を踏まえて転職をする事を指します。
もっとも多いケースが、現在勤めている病院やクリニックから、別の病院やクリニックへ変わるものです。
そのほかにも、診療科目を変更する転科を意味する場合もあります。
また、一般企業に雇われたり派遣される産業医や、医療関係企業でのコンサルティング的なポジションへの転職もあります。
こうした医師の転職は年々増加傾向にあり、転職平均回数も一人3~5回というデータもあります。
一般的な傾向として、大学病院勤務が転職回数が少なく、民間病院勤務の方が転職が多くなりやすいと言われています。
転職の理由としては、働き方や待遇、職場環境の改善を求めるケースが多いとされています。また、地方都市や田舎での勤務を選ぶ医師も増えており、そのために転職をする医師も多いと言われています。
転職の例としては次のようなものがあります。
ちなみに私は一般の転職回数3~5回以上の転職回数です。自慢になりませんけどね。

1-2. 医師転職のメリット
医師転職のメリットとしては、以下のようなものがあります。

1-3. 医師転職のデメリット
デメリットについては、以下のようなものがあります。
以上のようなデメリットがあるため、転職を慎重に考えることが必要です。自分自身が本当に転職を望んでいるのか、転職後の自分のライフスタイルやキャリアプランをしっかりと考えることが大切です。

1-4. 医師転職を考えるきっかけ
医師の転職理由について、2019年に厚生労働省が実施したアンケート調査によると、キャリアアップ(38.9%)やワークライフバランスの改善(31.2%)が最も多く、その他にも職場環境や給与面の不満、地域移動などが挙げられています。また、転職する医師の年齢層は若手が多く、特に30代前半が多い傾向にあります。
2. 医師転職の求人情報の探し方
医師転職において、どのような手段で行われているのか、参考になるデータがあります。2015年に日本医師会が行った調査です。病院側が医師の採用でよく利用する方法について下記のような結果が報告されました。
これを見ると、大学(医局等)へ依頼するというのが7割を超えているのが分かります。大学内での人事異動を前提としたものが多いと考えられます。厳密に言うと転職というのとはちょっと違うかもしれません。
続いて多いのが民間職業紹介事業者で、およそ5割の数字です。紹介事業者の利用は年々増加しているというデータが別にあるので、2023年の現在は、割合は増えているかもしれません。
上記の結果を踏まえて、下記の探し方についてメリットとデメリットを紹介したいと思います。
2-1. 人材紹介会社経由で探す
まず初めに、私が最もおススメする方法である、医師転職専門の人材紹介会社を利用するやり方を紹介します。
後述しますが、医師転職においては、教授や友人からの紹介や自分で転職先を見つけるやり方などたくさんあります。
それぞれにメリット・デメリットがあるのですが、医師として転職を繰り返してきた私の経験上、医師専門の人材紹介会社を利用することが最も失敗の可能性が低くなると思います。
それから「転職しようかどうしようか」と悩んでいるときに、いきなり身近な人間に相談してしまって、思いもかけず深刻な展開になるよりも、まったく赤の他人の人材紹介会社への相談のほうが気が楽じゃないですか?
思っていたのと違ったり、ほかの病院の様子を聞いてみたら結局今の職場がベストだと気づけたり、そう感じた時にビジネスライクにすっぱり関係を切ってしまえるのも、人材紹介会社のメリットだと考えています。
もちろん、それ以外にもメリットがあります。
こういう人材紹介会社はプロであり、最新の転職事情を把握しています。
医師の転職における求人情報の提供や面接対策、交渉までサポートしてくれることが多いです。そのため、時間と労力を最低限にしながら、スムーズな転職活動を行うことが見込めます。
そのような理由もあってか、近年、医師の転職で人材紹介会社を利用する人は増加傾向にあります。
転職方法のひとつとして、人材紹介会社を利用することを個人的にはお薦めします。
- 専門のキャリアコンサルタントが求人情報を収集しているので最新の医師転職事情を知ることができる。そして、医師の希望に合った求人を提供してくれる。
- 面接対策や交渉までサポートしてくれる。
- 多くの求人情報が集まっているため、選択肢が豊富になる。
- こっそりと転職準備できるため、現在の職場で噂の標的にされる心配が少ない。
- 自分に合わない求人を紹介されることがある。それをしつこく言ってくる。
- 紹介手数料が発生することがある。
- 人材紹介会社の選び方によっては、不良業者に引っかかる可能性もある。
2-2. 大学や医局に依頼する
自分が所属する大学や医局に依頼するというやり方は、医師が転職する上で、よくある転職方法のひとつです。
キャリアパスが明確で、そこに勤務を続けていく意志が強ければ、この方法は有効だと思います。例えば、医師としてのスキルやキャリアアップが前提の転職であれば、この方法が有効になる可能性は高くなります。
もしくは現状に不満があるわけではないけれど、結婚や介護などの理由で転居しなければならなくなり、引っ越し先の勤務病院を見つけたいという場合も有効かもしれません。
一方で、勤務時間や職場環境の改善を求める転職である場合は、注意が必要です。同じ病院内で異動して、それらが希望に合うものに改善されるかは、無理だとは言いませんが、なかなか難しいと思います。その場合はよくよく注意して取り組む必要があります。
もし、この方法を検討する場合、変な噂が流れて働きにくくなっても面倒ですから、信頼のおける上司や同僚にまずは相談してみるといいかもしれません。
- 自分が勤務している大学や医局なので、使用するシステムや機材が変わらないので、転職後も適応しやすい。
- 転職後の生活がイメージしやすい。
- 勤務体系、福利厚生、給与などの面は改善しにくい。
2-3. 知り合いに紹介してもらう
自分の知り合いから紹介してもらうという方法もあります。
個人的には、この方法で転職するのは、一般の人よりも医師のほうが機会が多い気がしています。
だからといって、おすすめするかどうかは別の話です。
順番にメリット・デメリットをご覧ください。
2-3-1. 教授、上司に紹介してもらう
教授や上司に転職の希望を伝え、求人情報を紹介してもらうという方法があります。
先述の「大学や医局に依頼する」方法に似ていますが、こちらは場合により現職と異なる勤務先になる可能性が高くなります。
スキルや経験を磨くのが動機であれば、よりよい転職先を紹介してもらえる可能性もあります。場合によっては、ポジションを作ってもらえることもあります。
うまく運べば自分が望む最高の転職を成功できるでしょう。
ただし、もし勤務時間や職場環境の改善を求める転職である場合は、この方法は上手くいかない可能性が高くなるので、ほかのやり方を検討したほうが良いでしょう。
- スキルアップを目指す転職の場合、最適の転職先と巡り合える可能性が高い。
- 非公開求人や自分に合った求人情報を手に入れやすくなる。
- 求人を出していなくても、採用してもらえることもある。
- 紹介者の信頼性もあるため、求人情報の信ぴょう性も高い。
- 紹介者が実際に働いている職場であれば、現場の生の声を確認できる。
- 自分の希望がうまく教授や上司に伝わっていない場合、失敗することがある。
- 思っていたものと違っても断りにくいし、転職後に辞めにくい。
- 紹介者との関係に遠慮して、給与や待遇面について、要望を出しにくい。
2-3-2. 友人、知人に紹介してもらう
自分の人脈を活用して求人情報を探す方法です。
友人や知人、同期の医師、学会で知り合った医療関係者などに自分の転職の希望を伝え、紹介してもらえるように頼むことで、一般には開示されない、いわゆる非公開求人などの情報を手に入れることも可能です。
- 人脈を活用することで、非公開求人や自分に合った求人情報を手に入れやすくなる。
- 友人などの紹介者の信頼性もあるため、求人情報の信ぴょう性も高い。
- 紹介者が実際に働いている職場であれば、現場の生の声を確認できる。
- 自分の人脈の範囲に情報源が限られる。
- 紹介者との関係に遠慮して、給与や待遇面について、要望を出しにくい。
2-4. 求人情報サイトから探す
医師の求人情報をまとめた求人情報サイトも存在します。
人材紹介会社と似ていますが、こちらは医療機関などが直接求人を載せているサイトであることが違いです。ですから基本的なやり取りは直接行うことになりますし、転職におけるサポートもありません。
世の中に医師の求人がどれくらいあるのか確認するのには便利なソースです。多様な求人情報を網羅しているため、幅広く情報収集が可能となります。
また、多くの求人情報サイトは検索機能を備えており、希望する職種や勤務地、給与などの条件に合わせて、絞り込み検索が可能なことが多いです。そのため、転職希望者は、自分に合った条件で求人情報を探すことができます。
さらに、求人情報サイトには求人企業の詳細情報や募集内容、求められるスキルや経験、選考方法などが掲載されており、比較的詳細な情報を得ることもできます。
一方、求人情報サイトに掲載されている情報は、求人を出している側が一方的に掲載していることも多く、必ずしも正確で信頼性があるとは限りません。
そのため、情報を収集する際には、時間をかけて複数の求人情報サイトを比較検討し、求人を出している病院や企業の情報を確認し、その上で信頼性の高い情報を選ぶことが重要となります。
- 自分の好きなタイミングで情報を検索できる。
- 多くの求人情報を網羅しているため、広範な情報収集が可能である。
- 検索機能により、自分に合った求人情報を絞り込み検索ができる。
- 求人側が直接の情報を掲載するため、比較的詳細な情報を得ることができる。
- 情報の正確性や信頼性には注意が必要である。
- 求人情報サイトに登録されている医師が多いため、競争率が高くなることがある。
- 非公開求人があまり載っていない。
求人情報サイトは医師転職において有用な情報収集手段の一つですが、情報の信頼性には注意が必要です。実際に応募する場合には、自分の責任で時間をかけて精査しなければいけません。
2-5. 自分で直接見つける
医師転職の求人情報を自分で直接見つける方法は、自分の希望に合った医療機関や企業に直接アプローチする方法です。
たとえば、どうしても働きたい病院や地域などがあり、自分から電話して求人を確認したりするものです。最近ですとホームページに医師求人を載せているところも多いです。
この方法は、自分で求人情報を集められるので、積極的に動けば多様な求人情報にアクセスできる可能性があります。
それから「どうしてもこの病院で働きたい!」という場合、その病院が求人を載せているなら、直接申し込みをすることができます。求人がなくても、熱意で採用されることもあるかもしれません。
私の知人の例ですが、新宿歌舞伎町の医院に転職し、その後、ふるさとにある繁華街で独立した人がいます。歌舞伎町の客層や診察内容に関しての経験を積む目的と、その医院が新しいシステムの導入に積極的だったのも希望する理由でした。(今では当たり前になった待ち順をネットで確認できるようにするシステムでした)
目的があれば有用なやり方だと思いますが、自分が思った通りの転職にするためには、膨大な時間と労力が必要になるので、正直に言えばお薦めはしません。
- 自分が働きたい職場に直接交渉できる。
- 人材紹介会社や求人情報サイトに掲載されていない非公開求人情報を得られる可能性がある。
- 圧倒的に時間と労力がかかる。
- 求職していることを現在の職場の上司や同僚に知られやすい。
3. 医師転職先の選択肢とメリット・デメリット
3-1. 公的病院のメリット・デメリット
医師が転職先を選ぶ上で最も基本的な選択肢となるひとつとして、公的病院があります。
ここで言う公的病院は、国や地方自治体が運営する病院を差します。
公的病院のメリットは、国や地方自治体が運営する病院のため安定した職場であることが多いです。そして、多岐にわたる診療科目を持っていることも多く、医師としてのスキルアップや幅広い診療経験が得られる点が魅力です。
一方で、公務員として働くことになるため、給与やキャリアアップについては限定されるというデメリットがあります。公務員としての給与は、一般的に民間に比べて低めに設定されています。また、給与アップについても、公務員の制度に従って昇給が決まるため、一定の時間が必要となる場合があります。
- 安定した職場であることが特徴。
- 多岐にわたる診療科目を持っているため、幅広い診療経験が得られる。
- 公務員として働くため、給与やキャリアアップに限界がある。
- 決定権が医師・病院ではなく、行政にある。
- 業務内容が多岐にわたりすぎ、多忙になる。
- 設備や医療機器が古い場合がある。
- 患者から受けるストレスが多い傾向にある。
3-2. 民間病院のメリット・デメリット
医師が転職先を選ぶ上で最も基本的な選択肢となるひとつとして、民間病院があります。
ここで言う民間病院は、民間企業や財団法人などが運営する病院です。
民間病院のメリットは、給与水準が公的病院よりも高い傾向にあることです。設備やサービスが充実していることも多く、患者満足度も高い場合があります。
一方で、独特な職場環境、人間関係や雰囲気が形成されていることも多く、適応するのに苦労することがあります。
- 高い給与水準が期待できる。
- 設備・サービスが充実しており、最先端医療に関われる可能性が高い。
- 独自の医療システムを持ち、専門的な医療が可能である。
- 転職時に要望を受け入れてもらいやすい。
- 公的病院に比べて、労働時間や勤務日数が少ない場合がある。
- 患者満足度が高く、医師として感謝される機会が多くなりやすい。
- 経営状況が悪化することがある。
- 公的病院に比べて職場の人間関係に苦労しやすい。
- 患者の対応件数などのプレッシャーが重い場合がある。
3-3. クリニックのメリット・デメリット
クリニックのメリットは、患者とのコミュニケーションが深くなりやすい点が挙げられます。また、いずれ自分で開業をする場合には、よい経験を得られます。
一方、デメリットは、患者数に依存する収入になるため患者数が少ない場合は収入が少なくなることが考えられます。
- かかりつけ医として患者とのコミュニケーションが深くなりやすい。
- 将来、開業を目指す場合、良い経験が得られる。
- 自分の時間を作りやすい。
- 患者数に収入が依存するため、給与水準はピンキリ。
- 設備や機器が揃っていないことがある。
- 最先端医療からは少し距離ができやすい。
3-4. 医療機関以外の転職先
医師の転職の場合、医療機関以外にも下記のような選択肢があります。
医師は、幅広い分野で活躍することができます。ただし、医療以外の分野で働く場合は、専門知識以外にも、ビジネススキルやコミュニケーション能力なども必要となるため、自己啓発や継続的な学びが求められます。
産業医というのは、たとえば50~499人の労働者の職場の場合、1人(非常勤でも可)の設置が労働安全衛生法で義務づけられています。私は産業医経験は今のところありませんが、産業医の友人の話を聞いているとかなりお勧めします。友人は自宅からリモートで産業医の業務をこなしています。
製薬会社などのような医療施設以外で働く医師は、全体の1%にも及ばず、極めて少数というデータがあります。この方向性への転職は十分に気を付けましょう。
COVID-19の流行により、メディアで医療系コメンテーターも増えたように思います。
Youtuberをしている医師も見かけます。
バイタリティーがあれば、活躍の場は無限大です。
4. 医師転職のために求められる書類
医師転職をする上で、準備が必要になる書類について、紹介します。
概ね、このような書類が求められるので、順番に確認していきましょう。
4-1. 医師転職のための職務経歴書とは
職務経歴書とは、医師としての専門的な知識やスキル、業務経験や実績、資格や語学力などが詳細に記載されたものです。明確かつ具体的な表現にすることが求められます。
職務経歴書は、転職活動において重要な役割を担います。
医師としての知識や能力、実績などを担当してきた職務を軸にして、採用担当者に自己アピールしやすくします。
職務経歴書は、採用担当者に与える第一印象を左右する重要な資料です。
そのため、情報の充実度や表現には特に注意が必要です。例えば、医療機関の規模や患者数、実績や成果について、具体的な数字を盛り込むことで、説得力のある職務経歴書を作成することができます。
4-2. 医師転職のための履歴書とは
履歴書とは、基本的な個人情報、学歴や職歴などをわかりやすく、正確に記載されているものです。
履歴書は、職務経歴書と同様に、転職活動において重要な役割を担います。
自分自身の学歴や職歴を分かりやすく正確に記載することで、採用担当者にアピールしやすくなります。また、自己PRを力を入れ、自分の強みや特徴を明確に端的に表現することで、自己アピールを強化することができます。
4-3. 医師転職のための自己PRとは
自己PRとは、自分自身の強みや特徴を伝えるものです。
職務経歴書や履歴書と似ているところもありますが、人となりを伝えやすい書類であることが特徴と言えるかもしれません。
自分自身の強みや特徴を明確に伝え、自分がどのような人物であるのか、これからどうしたいのか等を記載できます。
5. 医師転職で成功するためのポイント
医師の転職においては、自己分析や職場の情報収集が非常に重要です。
具体的な5つのポイントを順番に紹介します。
5-1. 自己分析をする
医師転職においては、自己分析が非常に重要です。
自分自身の強みや弱みを明確にし、自分がやりたいことや、求める環境を具体化することが大切です。
自己分析は、自分自身のキャリアプランを立てる上で欠かせないステップです。
例えば、自分が得意とする診療や専門分野、人とのコミュニケーションやチームワークなど、自己分析を行うことで自分の強みや弱みを把握することができます。
また、自分がやりたいことや求める環境を明確にすることで、自分に合った職場を見つけることができます。
自己分析をすることで、転職の成功率が高くなるのは間違いないです。
一方で、自分自身を客観的に見つめることが不十分な場合には、自分に合わない職場を選んでしまう可能性があります。
「転職するんじゃなかった」と後悔する事態に陥りますので、慎重に取り組む必要があります。
5-2. 職場の雰囲気や仕事内容をリサーチする
医師転職においては、転職先の職場の雰囲気や仕事内容をリサーチすることも重要です。
職場の雰囲気や仕事内容に合わせて、自分自身の志向性を考慮し、しっかりと自分に合う、適切な職場選びをする必要があります。
職場の雰囲気や仕事内容は、医師が長期的に働く上で重要な要素です。ですから、職場の雰囲気が悪いとストレスですし、働きにくくなり、また転職を考えたくなります。
また、仕事内容が自分のキャリアプランを実現するのに適切かどうかを見誤ると、時間の無駄になります。目的に適ったやりがいと満足感を得られる職場を見つけることが必要です。
知り合いでその職場で働いている人がいれば、それとなく尋ねてみるのもいいでしょう。しかし、それはあくまでその人の状況なので、鵜呑みにしすぎないことに気を付けてください。
ネットで検索してみると情報を得られるかもしれません。しかし、言うまでもなくネット情報はどこまで信じていいものか曖昧なため、参考程度にするのが得策です。
働いてみてから、思っていたのと違ったということにならないように、医師転職においては、職場の雰囲気や仕事内容をリサーチすることを忘れないでください。
5-3. 職場の評判や経営状態を調べる
医師転職においては、職場の評判や経営状態を調べることも重要です。
口コミサイトなどを活用し、職場の評判を確認することで、自分に合う職場なのか推測することができます。良くも悪くも、最近は、患者さんの口コミが多いので、とても参考になります。
また、特に民間病院の場合には、経営状態についても確認することが必要です。働いてみたら、実は火の車だったということもあります。
公的病院の場合も、行政の医療施策や予算などについて確認しておくことは必要と言えます。運営方針が国や市町村の考え方で変わる可能性があります。
その職場で働いている知人がいれば、ヒアリングしやすい項目かもしれません。しかし、経営状況など情報の精査も難しい分野ですから注意が必要です。
医師転職においては、職場の評判や経営状態を調べることは、後になって後悔しないために重要なステップです。ただし、口コミやネットの評価はあくまでも参考程度にとどめ、情報の信頼性には気を付けましょう。
5-4. 職場の理念やビジョンを確認する
医師転職においては、病院の理念やビジョンを確認することも重要です。
自分自身の価値観や志向性と合致する職場で働くことが、長期的なキャリア形成のうえでも、QOLの上でも大切です。
職場の理念やビジョンは、その職場が目指すべき方向性や目的を示すものです。それが自分自身の価値観や志向性と合致する場合、やりがいやモチベーションを高めることができます。
一方で、理念やビジョンを掲げるだけで、実際の業務には反映されていない場合もありますから注意が必要です。自分自身の価値観との相違がある場合には、よほどの理由がない限りは候補からは外すべきです。
職場の理念やビジョンを確認することは一見分かりやすそうで、実際の現場でどうなっているかを判断するのは難しいところでもあります。しかし、その理念やビジョンに共感を覚えられるのかどうか見極めることが重要です。
5-5. 人材紹介会社の利用を検討する
医師転職において、どのようなアプローチで転職活動を進めるか、決める必要があります。
前述した求人活動を探すやり方のとおり、自分で探したり、知人からの紹介となる場合は、転職先のリサーチについて独力で頑張らないといけません。
そこで考えたいのが、人材紹介会社の利用を検討するという選択肢です。
人材紹介会社を利用することで、求人情報の紹介に留まらず、転職先の具体的な情報も提供してもらえることが多いです。さらに必要書類の作成サポートや面接対策を行っているところもあり、転職に必要な情報やノウハウを得ることができます。
何かと多忙な医師の生活です。限られた時間の中で、人材紹介会社の利用により、時間を節約し自分に合った転職先を確認しやすく、転職の成功率があがりやすくなります。
一方で、希望条件と異なる職場を紹介されるケースもあります。そのような信頼のおけない人材紹介会社は利用しないという判断も必要です。また、そのような不一致がおきないように、希望条件は明確に伝えることを心がけましょう。
転職期間に余裕がないと、条件に合わない紹介で転職してしまうこともあるため、転職には余裕をもって取り組むことが求められます。
5-6. 医師転職で成功するためのアドバイス・まとめ
転職に成功するためには、まずは自己分析をすることから始め、職場の雰囲気や仕事内容、評判、理念やビジョンを調べることが求められます。効率的に進めるために転職エージェントの利用を検討することも有効でしょう。
特に今すぐ一人でもできるのが、自己分析です。自分自身の希望や不満を棚卸していくことが最重要と言えるでしょう。
自分自身の希望に合った求人を見つけ、情報を征することで、より良い転職先を見つけることができるでしょう。
6. 医師転職における最新動向
6-1. 新型コロナウイルスの影響と医療現場の転職ニーズ
新型コロナウイルスの流行は、医療現場の負担を大きくしました。その結果、慢性的な医師不足はさらに深刻化し、新たな医師の求人が増えています。一方で、医師側としても負担軽減を求める転職希望が増えていると言われています。
令和5年5月8日から新型コロナウイルスは5類へと移行しました。徐々にコロナ前のような状況に医療現場が落ち着いていくことが予想されます。それに伴い、疲弊した医師の転職希望が増えていき、さらにワークライフバランス(QOL)を意識した働き方へのニーズが高まるのではないかと予想しています。
6-2. リモート診療の普及と医師転職に与える影響
新型コロナウイルスの流行に伴い、リモート診療が急速に普及しました。
リモート診療は、患者と医師が対面でなくとも診察が可能であるため、時間や場所にとらわれずに医療を受けることができます。そのため、医療機関に勤務している医師でも、在宅勤務や複数の医療機関で兼業することができるようになりました。
体制としてそれが整っただけでなく、患者側でもリモート診療への抵抗が薄まり、今後も一定のニーズが見込まれます。
リモートで診察するための技術の進化も期待されるため、医師の働き方の多様化へ影響を与えることになると考えられます。
6-3. AI技術の進歩が医療現場に与える影響
2023年はChatGPTで世界に衝撃を与えました。AIの進歩は目覚ましく医療現場、そして医師転職においても大きく影響することが考えられます。
ひとつは、AIの進歩により診断が容易になるということがあげられます。
AIによる画像診断では、症例データが十分に集まった場合、人間よりも高い水準で診断を下せる結果も出ているそうです。
患者側がAIの設問に答えていくだけで、可能性のある病気を特定でき、医師の診断の助けになっていきます。
カルテ管理は医師の業務の中で、かなり煩雑で負担の大きい業務のひとつですが、こちらもAIの進歩で楽になる可能性が多分にあります。
誤診などの可能性を考慮すれば、まだAI独断は難しいでしょうが、医師の負担を軽減する一助になることは間違いないでしょう。
6-4. AI技術の進歩が医師転職に与える影響
AIが候補者のスキルや経験、志向性、人格特性などを分析し、医師と求人側を最適にマッチングするサービスが増えています。
AI技術を使用することで、より正確かつ迅速な選考プロセスが可能となり、医師側にとっても求人側にとっても効率的な採用が実現されます。
職務経歴書、履歴書、自己PRについても、AIによる自動作成や、自動分析が可能になることでしょう。
転職に割く時間が作れないという理由で、転職に踏み切れない医師がいれば、これらの技術が大きな助けになることは間違いありません。
7. 医師転職におけるまとめ
医師不足が深刻化している日本では、医師転職市場も活況を呈しています。
医師転職を考えるきっかけは、専門性の向上やライフワークバランスの改善など様々です。しかし、医師転職には手間のかかる転職活動が必要であり、情報収集や面接対策、応募先の選択など多くの課題があります。
忙しい医師が、効率的に転職活動を進める方法として、人材紹介サービスの利用を私はお薦めします。医師転職に特化したカウンセラーが、希望やスキルに合わせた求人情報を提供し、応募書類の作成や面接対策のサポートなど、転職活動を効率的かつスムーズに進めることができます。
また、新型コロナウィルスの影響によって医療現場は大きな変化を迎えました。医師のリモート診療の導入など、新しい働き方が増え、多様化しています。
自分自身を見つめ直し、今後どのようにキャリアを形成したいか、どのような人生を送りたいか、忙しい中にあっても自分を見つめ直す時間を確保し、よりよい転職の成功にこのページが役立てば幸甚です。